「今年一番のレース」 (ホンダ)
ジェンソン・バトン (C)Honda Motor Co Ltd.
November 29 2015 RACE
2015 Formula 1 Etihad Airways Abu Dhabi Grand Prix
2015年11月29日(日)・決勝
会場:ヤス・マリーナ・サーキット 全長:5.554km
今夜、2015年のFIA※フォーミュラ・ワン世界選手権がアブダビで幕を閉じる中、McLaren-Hondaは途中で劇的な瞬間に何度か遭遇しながらも、今シーズンで恐らく最も納得できる内容で、かつ自信につながるレースパフォーマンスを展開しました。
「力強いフィナーレを飾りたい」というフェルナンド・アロンソの希望は、スタート直後に打ち砕かれました。1コーナーのブレーキゾーンで3台のマシンが絡み合い、アロンソがパストール・マルドナド選手(Lotus)のマシンに接触。その接触によってアロンソのマシンのフロントウイングが損傷したため、急きょピットストップを余儀なくされ、その後、ドライブスルーペナルティを受けたアロンソは最後尾までポジションを落とすことになりました。
その後、1人で寂しいレースを繰り広げていたアロンソにとって、唯一のハイライトは、終盤にスーパーソフトタイヤを装着して、今日のレースのファステストラップをたたき出す試みを行ったことでした。
一方、ジェンソン・バトンのレースは、アロンソよりもさらに波乱の展開となりました。12番手からスタートしたバトンは、8周目に最初のピットストップを行うまではトップ10周辺のポジションを維持していましたが、その後、ピットボックスに入ろうとした際に、ピットストップを終えてリリースされたバルテッリ・ボッタス選手(Williams)のマシンがバトンのマシンを直撃。その接触によってバトンのマシンのリアウイングが損傷し、そのアクシデントによるパーツの破片が飛び散る位置に座っていたメカニックにとっては、怖い瞬間でした。
ピット前に追従していたマシンの列から離れ、DRSのメリットを失ってしまったものの、その後もバトンはプッシュし続け、「今シーズン一番」とバトン自身が称するマシンの実力を最大限に引き出しました。マーカス・エリクソン選手(Sauber)を堅実にオーバーテイクし、レース終盤には後方から追い上げるバルテッリ・ボッタス選手(Williams)からポジションを死守したことは、バトンおよびマシンに競争力があることの表れです。ポイント獲得には至らなかったものの、今日は苦境にもめげない、スキルと決意を持ったレースを展開することができ、今後に向けて良い兆しとなりました。
ホンダモータースポーツリリース
コメント
フェルナンド・アロンソ
MP4-30-01
スタート 16番手
レース結果 17位
ファステストラップ 1分44.796秒 52周目(トップとの差 +0.279秒、3番手)
ピットストップ 4回:1周目(ピットストップ時間 24.95秒 ※ノーズボックス交換)、8周目(ドライブスルーペナルティ)、17周目(ピットストップ時間 3.07秒)、47周目(ピットストップ時間 2.91秒)[オプション→プライム→プライム→オプション]
「今回は厳しく、不運に見舞われた週末でした。昨日の予選ではQ1でタイヤがパンクし、今日はスタート直後の接触によりマシンがコントロールできる状態でなくなり、押し出された私はパストール・マルドナド選手(Lotus)のマシンに接触しました。
その時点で私のレースは終わったようなものでした。それ以降はバトルを繰り広げることもなく、私はほぼ1人で走り続け、レースというよりはテスト走行をしているような感じでした。冬に向けて有効な情報を収集できたことを願っていますが、そんな状況でも今日はタイヤと燃料をセーブしながらの走行となりました。
レース中に、私はエンジニアに『プッシュしてみよう』と言いました。燃料が少ない状態でスーパーソフトタイヤのテストをしてみたかったのです。その状態ではすべてのことがうまく機能しました。
2016年に向けての準備は、すぐに始まります。来週はMTC(マクラーレン・テクノロジーセンター)でシートの取り付けおよびシミュレーターのテストがあります。我々が良い進化を遂げることができると、私は前向きに考えています」
ジェンソン・バトン
MP4-30-04
スタート 12番手
レース結果 12位
ファステストラップ 1分47.509秒 29周目(トップとの差 +2.992秒、17番手)
ピットストップ 2回:8周目(ピットストップ時間 4.89秒)、27周目(ピットストップ時間 3.16秒)[オプション→プライム→プライム]
「今日のレースは、恐らく今年一番の内容でした。
最初のピットストップのときには、バルテッリ・ボッタス選手(Williams)がピットストップを終えてリリースされそうになっているのが見えました。私がピットボックスに入ろうとしていたときだったので、Williamsチームは彼をリリースすべきではなかったのですが、私は彼のマシンと接触するかもしれないと覚悟しました。それによって私のピットストップが混乱し、メカニックのメンバーがかなり動揺する結果となりましたが、私にとって最悪だったのはレースにとどまるためにずっと追従してきた他マシーンとのDRSゾーンから外れてしまったことです。DRSゾーン内で走行することが我々の年間を通したゲームプランであり、それによって時間をロスしてしまいました。
今日、我々が実施したことについては満足しています。レース全体を通して燃料をセーブしなければならず、それによって痛みがのしかかり、難しい状況になりました。ただ、それでも私はコース上で楽しむことができました。Williams-Mercedesのマシンは我々のマシンよりもストレートでは格段に速いので、レース終盤にあれほど長い間、同マシンを後ろにキープすることはできないと思われていたと思いますが、我々はそれを成し遂げたのです。うれしいサプライズでしたし、今日のレースで得られた真のポジティブな点です。
今から来年を楽しみにしています。我々はプッシュし続けるのみです」
エリック・ブーリエ|McLaren-Honda Racing Director
「今日は、フラストレーションと疲れがたまるレースでした。骨の折れる、そしてフラストレーションのたまるシーズンを終えるにふさわしい形かもしれません。
昨日の予選順位はジェンソンがP12、そしてフェルナンドがP17(実際にはP16からスタート)であり、今日のレースでは2人のドライバーが12位(ジェンソン)および17位(フェルナンド)という結果に終わったため、ポイント獲得の可能性という意味では、午後のレースで前進することはできませんでした。
いずれのドライバーも、本日のレースをその順位で終えるまでに、さまざまなトラブルに巻き込まれました。ジェンソンは、Williamsのピットクルーが安全確認を行わずにバルテッリ・ボッタス選手をリリースしたことによって、マシンのリアウイングのエンドプレートを損傷しました。一方、フェルナンドはパストール・マルドナド選手(Lotus)と軽く接触したことで、我々としてはフェルナンドには非がないと思える状況であったにもかかわらず、ドライブスルーペナルティを科せられました。
それでも、今日はささやかではあるものの、勇気づけられる理由がいくつかありました。特に、我々のコーナーでのスピードは週末を通してかなり良かったです。実際、今日のレースでは残り5周の時点で、フェルナンドのマシンの設定を“フルデプロイメント”に切り替えました。これは、ここ最近苦戦を強いられていたフェルナンドにコース上で少しばかり楽しんでもらうためだけでなく、その設定でマシンがどれだけのパフォーマンスを発揮できるのか見てみることが目的でした。
結果はかなり励みになる内容でした。フェルナンドは52周目に1分44.796秒という最速タイムをたたき出しましたが、そのラップタイムはMercedesのルイス・ハミルトン選手とFerrariのセバスチャン・ベッテル選手に続いて3番目の速さでした。
ですから、我々は確実に目標に近づきつつあるのです。
この一年を振り返ると、今年はすばらしいシーズンではなかったですし、今シーズンすべての瞬間を楽んだとはとても言えません。我々のドライバー、スタッフ、スポンサー、パートナー、およびファンの方々にとって厳しい一年であったことは分かっています。ただ、確実に言えるのは、我々はライバルチームに対するパフォーマンス不足を解消するために、人として可能な限り精力的に仕事を続けてきましたし、これからもそうするつもりだということです。
最後に、以下の方々に敬意を表します。
我々のドライバーはコース上でもコース外でもすばらしかったです。両ドライバーとも懸命な走りを披露し、入賞圏内のドライバーを苦しませるようなポジションで完走することがほとんどなかったにもかかわらず、それについて文句を言うことは一度もありませんでした。
スタッフは疲れを見せることもなく精力的に仕事をしながら、国内外ですばらしいチームスピリットを見せてくれました。スタッフ一同には脱帽です。
また、スポンサーやパートナーの皆さんに対しても誇りと感謝の気持ちでいっぱいです。皆さんは我々のことをずっと信じてくれていますが、近い将来、その忠実なサポートに恩返しできるようにします。
最後になりましたが、苦しく残念な結果が続く中、ファンの方々は非常に忠実で力強いサポートをしながら、McLaren-Hondaを信じて下さっていました。そんなファンの皆さんにも敬意を表します。本当にありがとうございました!」
新井康久|株式会社本田技術研究所 専務執行役員 F1プロジェクト総責任者
「2015年最終戦アブダビGPが終了しました。苦しい戦いの中、1年間を通して高いモチベーションを持ち続けてくれた2人のドライバーに感謝したいと思います。
また、声援を送ってくれたファンの皆さま、そしてチームをサポートしてくれた方々にお礼を申し上げたいと思います。
19戦、一緒に転戦したチームメンバー、そしてウォーキングとさくらのメンバーは本当にご苦労様でした。
最終戦もスタートでの混乱もあり、厳しいレース結果となりましたが、中位でのバトルも見られ、またマシン全体の方向性が見えてきたと感じます。パワーユニットとして不足しているデプロイメントや信頼性を解決して、来シーズンにはジャンプアップできるよう全力を上げた開発を加速します。
一年間、ご声援ありがとうございました」
※ FIAとは、Fédération Internationale de l'Automobile(国際自動車連盟)の略称
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