タイヤから見たヨーロッパグランプリ バレンシアでのスピード、一貫性、耐久性
(C)Pirelli Motorsport
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2012年ヨーロッパグランプリ: 2012年6月22-24日 バレンシア
グランプリ概要:
今シーズンのFormula Oneカレンダーで3戦連続の市街地サーキットで行われるヨーロッパグランプリは、シーズン中で最も多いコーナー数(25)を有し、高い気温の下での走行が予想されています。今回は、P Zeroホワイト・ミディアムタイヤとP Zeroイエロー・ソフトタイヤが選択されています。
この組み合わせは、オーバーテイクが非常に難しいサーキットにおいて、耐久性と性能を際立たせます。モナコ同様、予選が極めて重要となり、スターティンググリッドの上位を得るためには、ソフトタイヤのスピードが不可欠となるでしょう。決勝では、ミディアムタイヤの強さと一貫性が、戦略上の重要な部分となります。
コーナーの多くは、高速で流れるような構成で、オーバーテイクポイントは限られ、マシン間に大きなスピードの差もないため、オーバーテイクは難しくなっています。最後の連続コーナーでは、マシンは時速290kmで走行し、最終コーナー手前でヘビーブレーキングが行われ、マシンは130mに満たない距離で時速310kmから時速60kmまで減速します。減速Gは、ピーク時5.2Gに達し、ホイールをロックアップするリスクを伴いますが、ここでもコーナーレイアウトがオーバーテイクを難しくしています。
このため、タイヤ戦略が重要になり、トラック上同様、各チームはピットストップによるオーバーテイクをトライします。昨年、上位勢は同じ戦略を採りました。ソフトタイヤでスタートし、3回のピットストップを行い、最終スティントをミディアムタイヤで走行しました。今年はマシンスピードが接近しているため、昨年以上に正しい戦略が重要になります。
全ての市街地サーキットと同様、週末を通しての路面の改善は、ラバーが乗るにつれて大幅に進んでいくでしょう。
ピレリジャパン・プレスリリース
ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター ポール・ヘンベリーのコメント: 「バレンシアは、これまでの市街地サーキットと大きな違いはありません。ただ、より高速なサーキットでより高い気温の下で行われるため、タイヤには大きな負荷がかかります。市街地サーキット共通の特徴は、オーバーテイクが困難であることです。そのため、予選の重要性が大きくなります。したがって、決勝はシンプルな流れになるものと思います。昨年は、1ストッパーに挑戦するチームもいましたが、2回もしくは3回ストップが主流になりそうです。気候は、週末を通して、一貫して暖かくなりそうです。温度に関する不確定要素は少ないため、大きなサプライズは起こりにくいでしょう。これまでも、ソフトとミディアムの組み合わせは一番多く使用しています。この組み合わせは、性能と耐久性の間の完璧な妥協点を示してきました。これによって、各ドライバーは、必要な時にスピードが発揮できるだけでなく、決勝では長いスティントの走行が可能になります」
ドライバーのコメント パストール・マルドナード(ウィリアムズ) : 「バレンシアは、レース用トラックと市街地コースの中間的なサーキットで、典型的なサーキットではないので、いろんな要素が入り混じっていて常にトリッキーだ。セッションが進むにつれて、路面は驚くほど改善していく。とても長いストレートと多くの低速コーナーがあるので、マシンの最適なバランスを見つけるのが難しい。気温と路面温度は高くなり、長いレースだから、タイヤには厳しいね。いい結果を生むためには、タイヤマネージメントが重要になるだろう。決勝へのタイヤ温存策も有効かもしれない。1セット多くタイヤを持っていれば有利だからね」
ピレリ・テストドライバーのコメント ハイメ・アルグエルスアリ : 「バレンシアは大好きなサーキットだよ。僕にとってはもうひとつのホームレースだからね!多様なコーナーがあって、オーバーテイクが難しいから、とてもチャレンジングなサーキットでわずかなミスも許されないんだ。僕は’ストップ and スタート’サーキットと呼んでいる。常にその繰り返しだからね。タイヤにとっては、トラクションとブレーキングで大きな負荷がかかる。この点ではカナダに似ていると思う。速いラップのためには、トップスピードの速さとともに、トラクションの連続が最も大きな要素になる。また、低いダウンフォースセットアップになるので、タイヤの摩耗にも影響を与えるだろう」
テクニカルノート:
・ バレンシアでは、時速300kmを超える速度から減速するいくつかのエリアで、ブレーキが酷使される。これは、特にフロントタイヤに厳しいタスクで、マシンを減速すると同時にターンインしなければならず、タイヤに2つの異なる負荷が課されることになる。しかし、バレンシアでは、ブレーキングよりもトラクションの方が、より大きな縦方向の荷重を生む。
・ 25のコーナーが存在するバレンシアでの良好なセットアップのための鍵となる要素は、マシンを正確にターンインさせることである。このためには硬めのサスペンションセットアップが理想的である。しかし、低速コーナーで十分なメカニカルグリップを確保するために、サスペンションは軟らかさを保つ必要がある。いつものように、非常にデリケートな妥協点が求められる。
・ バレンシアの路面は特に粗くはない。実際、レース週末の序盤は、非常に滑りやすい路面である。しかし、絶えずトラクションが要求されるため、リアタイヤへの負荷は大きくなる。各チームは、この点において、タイヤの摩耗にも気を配る必要がある。
これまでのタイヤ選択:
スペインにおけるピレリ:
・ ピレリは、Formula Oneへ参画する準備期間中、バレンシアで2度のテストを行いましたが、それは2008年に完成した全長5.419kmの市街地サーキットではなく、都市郊外の常設サーキットでした。
・ ヨーロッパにおけるピレリの巨大な流通ハブのひとつは、スペインのマンレサにあります。その設備は2010年に完成し、敷地面積2800㎡の倉庫や、スペインやポルトガルへ向けて搬送する乗用車、トラック、二輪用タイヤの19の積み降ろし場があります。
・ 現在、スペインは、バルセロナとバレンシアで年間2回のグランプリを開催する唯一の国です。先月のスペイングランプリでは、パストール・マルドナードが、ピレリタイヤを使用してウィリアムズに8年ぶりの勝利をもたらしました。その他のニュース: ・ 先頃、ピレリは、新製品の乗用車用タイヤCinturato P7ブルーを発表しました。このタイヤは、ミディアムカーへ向けて、タイヤ寿命の向上、ウェット路面での制動距離の短縮、および転がり抵抗の低減を実現すべく設計されています。
・ Formula Oneチームがバレンシアの市街地サーキットへ向かう準備を進めていた頃、GP3ドライバーたちは、常設のリカルド・トルモ・サーキットでのグループテストに参加していました。暑いコンディションの中、カーリンのウィリアム・ブラーが、2日間のテスト中の最速タイムを2日目に記録しました。タイムは、1分26秒389でした。
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