タイヤから見たインドGP
(C)Pirelli Motorsport
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2011年10月27日、デリー
ブッダ・インターナショナル・サーキットは、F1とピレリにとって新たな戦いの場所です。開催国インドは、自動車市場が急速に拡大している国のひとつです。明日、ドライバーたちは、このサーキットでの走行を初めて経験することになります。
それでは、デリー近郊に位置する全長5,137mのサーキットにおいて、タイヤが直面する非常に厳しい要素を何点か紹介していきましょう。
サーキットについて:
新しいサーキットは、最初は路面が汚れていて滑りやすく、タイヤがグリップを得るのが非常に難しい状態です。特に、レース週末序盤のフリー走行中は、この傾向が顕著であると思われます。路面の良質化(グリップが高まっていく状態)は、週末にかけて時間を追うごとに進んでいくでしょう。
第1セクターは、緩やかな左コーナーから右コーナーへのブレーキングを迎えます。
ここでは、直線からのブレーキング時よりも右フロントタイヤにかかる荷重が軽いため、ブレーキング中のマシンを不安定にします。内側のタイヤは、エイペックス付近でロックしやすくなり、アンダーステアを起こします。そのため、外側のタイヤだけでステアリングを切る仕事の全てをこなし、マシンのフロントを支えなければならないのです。
F1カレンダーの中で最も長いストレートのひとつであるメインストレート上では、DRSフラップがオープンになります。路面上のダートは、加速中のホイールスピンを招きます。タイヤの表面温度は、100℃以上に上昇し、トレッドに非常に厳しい状態となります。
ターン10は、間違いなく最も厳しいコーナーでしょう。ワイドなコーナー半径とキャンバー角度によって、コーナーへの進入速度は高速で、タイヤのグリップは限界に達し、タイヤには非常に大きな負荷がかかります。
ピレリジャパン・プレスリリース
新しいサーキットに備えて:
今年は、すべてのサーキットがピレリにとっては初体験となりますが、これまで一度もレースが行われていないサーキットは、特に難しい要素を含んでいます。これは、舗装されたばかりの路面の特性と走行データの欠如によるものです。
シーズンの開始時点において、ピレリは、今年のF1が開催されるすべてのサーキットに関するデータを得ていました。それらは、各チームやオーガナイザーから提供されたものです。さらに、過去のテストデータやF1以外のレースのデータも入手しています。
データには、タイヤへの負荷、過去の摩耗率、加速や減速に関するドライバーのフィードバックや統計値、気象情報や過去の戦略などが、他の重要なパラメータとともに含まれていました。
今回は新設されたサーキットのため、過去のデータは全く存在しません。そのため、レースへの準備やタイヤの選択は困難を極めました。ピレリが、あらゆる可能性に対処できるように、初開催のインドGP用にハード・タイヤとソフト・タイヤを選択した理由はここにあります。
さらに、2名のピレリエンジニアが、シンガポールGPへ向かう途中でブッダ・サーキットを調査しました。彼らは、このサーキットを初めて走行した人々の一員となりましたが、多くの時間が詳細な路面調査に費やされました。
彼らは、高性能レーザー計測機器を持ち込みました。舗装路面を構成する石の間隔や形状を調査することによって、サーキットの路面の粗さを評価するためです。正確な状態を把握するために、何度も計測が行われました。これらのデータを使用することにより、タイヤから見たバーチャルな路面状態をコンピュータ上で作成することが可能になったのです。
加えて路面のアスファルトサンプルを併用し、ピレリは、摩耗レートとサーキット各所のアスファルトがタイヤに与える影響を計算しました。それでもなお、これらはあくまでも理論上の計算です。週末、24台のクルマが走行することによって路面上にラバーが乗る状況を再現することが不可能であるように、計算値を現実のデータと置き換えることはできないのです。
サーキットへ到着すると、特に今回のインドにおいて、ピレリのエンジニアはサーキット上を歩きます。彼らがこれまでに得たデータを実際にチェックするためです。また、彼らは問題が潜在する場所を見つけます。例えば、シャープな縁石、最近改修された箇所や、マンホールのような市街地サーキット上の要素などです。
ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター ポール・ヘンベリーのコメント:「完全に新しいサーキットへの準備が、確立された開催地への準備よりも困難であることには疑いの余地がありません。しかしながら、テクノロジーと私たちがこれまでに得たノウハウによって、実際にレースをしていなくても、いくつかの非常に正確な予測を立てることができます。それでもなお、誰も過去の情報を持っていないサーキットにおいては、あらゆる事態に対応するために、私たちは保守的なタイヤ選択を行う必要があるのです」
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