タイヤから見たヨーロッパGP
(C)Pirelli Motorsport
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2011年6月23日、バレンシア
F1シーズンは再びヨーロッパに戻り、バレンシア市街地サーキットで第8戦が行なわれます。ピレリにとってはここでも新たなデビューを迎えることとなります。カナダのフリー走行でテストされたミディアム・タイヤが実戦で初めて使用されるのです。今週末バレンシアでプライムタイヤとして用意されたミディアム・タイヤは、白色の識別マークが刻印され、PZeroホワイトとして知られています。この市街地サーキットにはどこよりも多くのコーナーがあり、タイヤにはシーズン中でも最も高い負荷がかかることになります。重要なコーナーをいくつか確認していきましょう。
サーキットについて:
全長5419mのこのサーキットには、25のコーナー、300km/h近い最高速に達する4本のストレートがあります。
ターン2は比較的低速のコーナーで、空力ダウンフォースは小さくなるため、コーナリング中やトラクション時にはグリップの大半をタイヤの粘着力に頼ることになります。新型ミディアム・タイヤは、従来型に比べて耐久性だけでなくグリップも高められています。アンダーステアを防ぐためには、このグリップが非常に重要な役割を果たします。ソフト・タイヤの方はグリップとパフォーマンスに、より大きな比重が置かれています。
ターン9はラップをまとめる上で鍵となります。橋に向かう路面には段差があり、グリップレベルが大きな問題となります。橋の出口も同様で、さらにその直後にタイトな右コーナーがあるだけになおさらです。続くストレートではエンジンの全パワーを7速まで絞り出し、KERSも使用して最大限のトップスピードまで加速します。全開のパワーに対して、タイヤは最大限のトラクションを発揮しなければならないのです。
ターン17は鋭いコーナーで、アウトラップには瞬時にタイヤに熱を入れるのに役立ちます。ここからは非常に難しいコーナーの連続する区間ですが、ソフト・タイヤを履いていればドライバーは最大限のグリップを得てマシンを完璧にコントロールし、コーナーを攻めていけるでしょう。この連続コーナーは7速で駆け抜けていくため、完璧な軌道でレーシングラインをなぞることが重要です。できるだけきちんとこれを守ることが、タイヤの摩耗を防ぐ方法なのです。ヘビーブレーキングの後、最終コーナー、そしてホームストレートへと進みます。ここでは再びエンジンのフルパワーが発揮されることになります。
ピレリジャパン・プレスリリース
ブリスター:
ドライバーが直面するタイヤの問題のひとつが、非常に有名な“ブリスター”です。これはオーバーヒートによって発生するものですが、どのPZeroタイヤもこのブリスターの発生を最小限に抑えるために化学的な処理がなされています。
タイヤのオーバーヒートにはいくつかの理由がありますが、最大の理由は、スライドさせ過ぎた際に発生する多大な摩擦です。ダウンフォースが足りない場合やマシンセットアップの問題、ドライビングスタイルがアグレッシブ過ぎる場合に発生します。
ブリスターはタイヤの最も深い部分から始まります。この部分には、かかる負荷および温度が最も高くなるからです。カーカス付近のゴムが過熱した際にこの現象が起き、タイヤの内部に小さなエアポケットが発生します。これが徐々に、様々な箇所でコンパウンドを引き剥がしていくのです。
これを放置すれば、ゴムはやがてタイヤ表面から分離していきます。どのくらいの大きさになるかは、熱量とタイヤにかかる負荷の大きさによって変わってきますが、非常に大きく視認できるほどのブリスターは、トレッド表面だけでなくカーカスにまでダメージが至ることもしばしばです。人間の水ぶくれに非常によく似ており、それゆえにこの名前(ブリスター=水ぶくれ)がついたのです。
ブリスターの発生を防ぐためには、きちんとした的確なドライビングスタイルを維持する必要があります。そうすることで、クルマが横滑りしてタイヤが過熱するのを防ぐことができるからです。コーナーを駆け抜けるのに必要な空力グリップを得るために、チームとしても確実に適度なダウンフォースを装備する必要があります。
他車の後ろに接近して走っている時には、空気が薄くなるためにダウンフォースが奪われ、横滑りしやすくなります。これが、オーバーヒートを引き起こし、最終的にはブリスターを発生させるもうひとつの要因なのです。
路面コンディションも非常に大きな影響を持っています。ラバーが乗っておらず路面が“グリーン”な時は、グリップが低くクルマは滑りやすくなります。レース週末が進むにつれて、ある割合で路面にはラバーが乗っていき、グリップの高いゴムの層ができ上がるのです。
このクリーンライン、または“ラバーインした”と表現されるライン上を走れば、オフラインに比べて非常に高いグリップレベルを与えてくれますし、タイヤの性能低下やブリスターの危険性さえも小さくしてくれます。しかしながら今季のPZeroタイヤにはブリスターはほとんど発生しておらず、性能の安定性の高さを証明しています。
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