タイヤから見た中国GP
(C)Pirelli Motorsport
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タイヤから見た中国GP
マレーシアGPのフィニッシュから72時間も経たないうちに、ピレリはF1世界選手権の第3戦、中国GPの準備を進めています。オーストラリアGPと同様に、各チームには追加で金曜フリー走行のみで使用が可能な1セットのハード・タイヤが供給されます。それ以降のタイヤ供給数に変更はありません。
タイヤの“マーブル”について:
中国GPにはハードとソフトのPZeroタイヤが供給されます。これはピレリの哲学でもあるオーバーテイクの増加をコース上でもピットストップでも果たすためのもので、決勝では少なくとも2回のピットストップが予想されています。
従来よりもタイヤの摩耗が速く進むことで、タイヤ表面のゴムかすがコース上に積もることになります。時と場合によって多少の違いはありますが、基本的にキャラメルほどの大きさで10〜20グラムほどです。まさにキャラメルのように、熱を持っている時は柔軟性がありますが、冷えると硬化します。このタイヤかすは“マーブル”と呼ばれ、F1の世界では常に存在してきたものです。しかしピレリタイヤの場合はその特性ゆえに従来よりも大きく、柔らかいマーブルが発生することも事実です。
新品時のF1用タイヤは8.5kgの重量がありますが、1スティントあたり1.5Kg分ほど摩耗します。従来よりもピットストップ回数が増えたこともあって、これまでよりも多くのゴムかすがコース上に積もることになります。
こうした現象はF1にとって目新しいことではありません。しかしマレーシアのようにタイヤ摩耗が大きなサーキットでは、この傾向が顕著になります。ピレリは将来に向けてこのタイヤかすの発生量を減らす方策を模索していますが、デグラデーションが大きくなるよう設計されたタイヤの副産物としては避けようのないものであることもまた事実なのです。なお、コース上に積もったマーブルがドライバーや観客にとって危険を生むということはありません。
中国GPが行なわれる上海サーキットは路面も気候もマレーシアほどアグレッシブではなく、オーストラリアと似たような条件です。従って、最初から最後までスリリングなバトルが展開されたマレーシアGPよりもタイヤの摩耗は30%ほど少なく、ピットストップの回数も少なくなると予想されます。
サーキットについて:
上海インターナショナル・サーキットは高速のストレートと非常に長いコーナーが特徴で、タイヤにとっては厳しいテストの場となります。全長5.451kmのサーキットを56周して総距離305.066kmで争われます。路面はスムーズです。ターン1は徐々にきつくなっていくコーナーで、左フロントタイヤに大きな負荷がかかります。タイヤが冷えているレース序盤は特に厳しいものとなるはずです。カーブがきつくなると、空力によるグリップは減ってメカニカルグリップに頼ることになります。コース序盤の複合セクションを抜けると、ドライバーは素早くシフトアップしてこのサーキットの最高速となる時速280kmまで一気に加速していきます。
ターン13は最もチャレンジングなコーナーで、左リアタイヤのカーカスには大きな縦方向の加速負荷がかかります。これは路面のキャンバーによって負荷が高まるせいで、通常の3倍という大きな負荷です。また、サーキットには地盤沈下によって路面がうねっている箇所も見受けられます。
ストレートの最後には、タイトな右ヘアピン(ターン14)に向けたハードブレーキングが待ち受けています。ここでは1速ギアまで落とし、830馬力のエンジンによって生み出された最高速から3秒も経たないうちに急減速します。
ここからメインストレートへと続く複合セクションでは、ホイールスピンを抑えるため最大限のグリップが要求されますが、このグリップ力はどちらのコンパウンドを使うかによって大きく変わってきます。
ピレリジャパン・プレスリリース
ピレリ・モータースポーツ・ダイレクター ポール・ヘンベリーのコメント:
「ここまでのレースが非常にエキサイティングだったとおっしゃる皆さんを失望させたくはありません。中国でも再びスリリングなレースとなることを期待しています。レースの途中から見るなどということをすると、今年は重要なポイントを見逃してしまいます!様々な戦略が交錯した結果、マレーシアGPでは最後の10周は非常にスリリングなものとなりました。しかし卵を割ることなくオムレツを作ることはできません。マレーシアGPの場合は、ピレリタイヤなくしてはあれほどの面白いレースはあり得なかったと言うべきでしょう。
タイヤの“マーブル”が路面に積もるのは、デグラデーションが大きくなるよう設計された今年のタイヤの持つ、まさに今年のレースを面白くしているその特性を考えればごく当然のことです。摩耗したタイヤのゴムはどこかへ行きますが、それはこれまでもそうだったのです。しかしながら、我々はチームにとって最良の方策を提供するためにここにいるのですから、将来的にタイヤかすの量を減らすための方策を検討しています。それでもピレリの基本的な哲学は変わりません。我々はドライバーたちにレーシングを取り戻してあげたいのです」
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