S・アグリ 中国GP事前ニュース
Shanghai International Circuit
2007年中国GP プレビュー
インタビュー:ニック・ハワース オペレーションディレクター(MSLグローバル)
Q:ニック、F1のケータリングの仕事は大変だと思いますが、どのように1シーズンの計画を立てるのですか?
NH:前もってその年のレースの数は知らされているが、通常、3戦の遠征レースからシーズンはスタートする。
11月から計画を立て始めて、12月中旬には発送する荷物の準備をする。
同じような荷物を3セット発送することになるが、その内容はオーブン、冷蔵庫、テーブル、食器など、旅するレストランを設営するのに必要なものすべてだ。
SUPER AGURI F1 TEAMの船便で、この荷物をオーストラリア、マレーシア、バーレーンへと送る。ホスピタリティブースのテレビなど、現地でレンタルするものもある。
また、遠征レースの荷物を準備するときには、国によって電圧が110ボルトと220ボルトの2種類があるので、それを考慮して電化製品を選ぶ。
食材は3レース前から計画する。
例えば、オーストラリアGPならば、1月には現地の業者に電話をかけ始める。
その業者が必要なすべての食材を直接サーキットへ届けてくれるんだ。
ヨーロッパのレースではシュトゥットガルトに配給センターがあって、そこにいるMSLグローバルの社員がフルーツ、野菜などのストック、また、けん引車などの道具を管理している。
日曜日のレース終了後、モーターホームの在庫を確認してから、シュトゥットガルトの社員に次のレースのためのオーダーを発注する。
グランプリの週の火曜日には発注した荷物がサーキットに届くので、それから準備を始める。
かなりややこしい作業だが、何年もやっているので、もう芸術の域にまで達しているよ!
SAF1 Catering Team (C)Super Aguri F1
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Q:レースチームのスタッフだけでも50人を越えるさまざまな国籍の人がいるわけですが、こういうスケールの大きいケータリングにどのように対応しているのですか?
NH:ほとんどのメンバーがイギリス人だとは言っても、SUPER AGURI F1 TEAMは日本のチームだ。
しかし、われわれはインターナショナルなケータリング業者なので、どんな料理でも作れるふたりのシェフが対応している。
日本食もすべて自分たちで作っているが、ある意味、西欧料理を作るより楽だ。
琢磨が親指を立ててOKサインを出してくれるのだから、ちゃんと作れているんだろうね!
どんな料理を作るべきかはドライバーやチームのトレーナーにも確認するし、チームにも尋ねる。
彼らは長い間、家に帰れないので、食事には満足してもらいたいからね。
もし、チームのメンバーから何かリクエストがあれば、個別にそれにも対応したいと思っている。
例えば、ダニエル(オーデット)には好みのタイプのスパゲティがあったりするので、このようなリクエストにもフレキシブルに対応できるようにしている。
Q:ヨーロッパのレースでの荷物の運搬はどのように異なりますか?
NH:5台トラックがあって、合計の平均重量は160トンぐらいになる。
その5台がレース毎に荷物を運び、1台の保冷トラックがドイツを往復して新しい食材を補充する。
パドックでもSUPER AGURI F1 TEAMのモーターホームは簡単に設営できる方なので、2週連続のレースの時などはラッキーだね。
短時間でモーターホームを移動できるからね。
総合的には、ヨーロッパのレースよりも、遠征レースの方がロジスティックスの面ではずっと複雑だ。
Q:年間17回、1回のレースの週末で約13回食事を提供するわけですが、どのようにメニューを決めるのですか?
NH:1日のうち朝食がメインとなるが、朝食のメニューは毎日同じだ。
ランチは、チームはゆっくり食べる時間はないので、パスタやサラダなどの軽い食事を用意する。
夜は、弁当形式のものと、仕事が長引いた時のディナーの2種類だ。
弁当は現地の食事とは正反対のものにする。パドックでのケータリングの食事がスタートする前夜に、レストランで地元の料理は食べている可能性が高いからね。
これもレース毎にメニューは変える。
金曜日の深夜の作業中のディナーには、ひとつのテーマを作るんだ。
例えば、カレーナイトとか、ブタのローストの中世の晩餐とか、チャイニーズのテイクアウェイとかね。
仕事に追われた1日のディナーの時間が楽しくなるからね。
でも、他に食べたいものがないか、いつもチームに尋ねるようにしている。
シェパーズパイが食べたいとか、ラザニアが食べたいなんてリクエストがあれば、それを作るんだ。
健康的で栄養価の高い、シンプルな料理を心がけている。
チームも大体満足してくれていると思うよ。
Q:チームのゲストのためのメニューはどうやって決めるのですか?
NH:SUPER AGURI F1 TEAMにはふたりのシェフがいる。
マイク・スミスがヘッドシェフで、彼が主にチームのゲストのメニューを担当している。
ヨーロッパのレースではスコット・ヤングがシェフを務めているが、遠征レースではふたりが協力してすべてのケータリングに対応している。
彼らはとても幅広い才能の持ち主で、職場でも非常に優れた能力を発揮している。
ゲスト用メニューは、その日ごとに現地の料理を作る。
マイクは驚くほどクリエイティブで柔軟だ。
その日ごとにゲスト用メニューを決めることもある。
例えば、暑ければ冷たい料理にするとかね。
もちろん、そのレースのために発注した食材を使わなければならないわけだが、週末を通して非常にフレキシブルにメニューに対応している。
Q:中国ではどうやって食材を調達するのですか?
NH:カレンダーに中国のレースが新しく加わることが発表になったときに、サーキットのシェフと一緒に中国へ飛んだ。ホテルを訪ね歩いて、最高のスーパーマーケットの場所をたずねたり、マネージャーに自己紹介したりして歩いた。そして、彼らからもらった食材のリストをもとに、自分たちのショッピングのリストを作った。今年は、昨年、われわれがオーダーしたもののリストを業者が保管してくれていたので、今週末のレースのために必要なものにリストを書き換えて、彼らに送り返した。火曜日の午前中には、サーキットに荷物が到着していたよ。
Q:上海のレースで何か特別なことはありますか?
NH:クルマの運転だね!
毎日、ケータリングの準備や片付けで長時間働くので、バスでホテルまで送り迎えしてもらえて、バスの中で寝ることができるのはうれしいよ!
でも、中国語なのでヨーロッパより買い物が大変だ。
中国語が全く読めないので、何か発注するにも翻訳してもらわなければならない。
でも、すでに中国には何回か足を運んでいるので、これも楽になってきている。
自分たちに何が必要かもわかっているしね。
次は、もちろんシンガポールがぼくたちにとってはエキサイティングなレースになるわけだが、2008年のオーストラリアGPが終わったら、すぐに現地に飛ぶつもりだ。
しかし、方法は同じなので、ひとつのレースを片付けたら、また次のレースへという感じかな。
SUPER AGURI F1 TEAMのメンバーはみんな最高だし、ぼくたちもチームの一員として受け入れてもらえている。
これは、特に現場で働くスタッフにとってはとても重要なことだ。楽しんで仕事をさせてもらっているということだね。
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