16 July 2007
Leafield, UK
2007年ヨーロッパGPプレビュー
インタビュー:マーク・プレストン(テクニカルディレクター)
Q: マーク、2007年シーズンがスタートする時、今年の目標について話していましたが、目標は達成できましたか?
マーク・プレストン(以下:MP): もうじき全て達成できる。
シーズンがスタートする前、ぼくはチームに3つの目標を設定した。
まず第1に、予選第2セッションに進出すること、2番目は、チームの初ポイントを獲得すること、そして、最後はコンストラクターズ・チャンピオンシップ10位以内に入ることだ。
これまでに実際に起きたことは、1年半前の想像をはるかに越えるものだった。
メルボルンでは予選第2セッションに進めたばかりではなく、1台が予選最終セッションにまで残ったのだからね。
初ポイントは、バルセロナで琢磨が達成した。
思い出深い出来事だ。あれ以来、正式にF1への仲間入りが果たせたと胸を張って言えるようになったと言っていいだろう。
1ポイントを獲得できたということには様々な意味がある。
あの1ポイントのおかげで、チームの名を確実に記録に残すことができた。
Mark Preston (C)Super Aguri F1
拡大します
Q: 3番目の目標に関してですが、達成できる可能性はどれぐらいですか?
MP: 現在、4ポイントを獲得しているので、3番目の目標が達成できる可能性は高い。
しかし、フランスで経験したように、F1は驚くほど競争が激しくなっている。
2年前には107%より遅いマシンは失格になるというルールがあったが、フランスのグリッドに並んだマシンの大部分は102%だった。
それを考えても、確かに厳しい戦いになっていることがわかる。
Q: 新たな目標はありますか?
MP: 3つの目標のうち2つはすでに達成してしまっているが、最後の1つが一番むずかしい目標だと言えるだろう。
マシンのパフォーマンスを改善しながら、現在のレベルの競争力を維持する必要がある。
しかし、あえてもう一つ単純な目標を付け加えるならば、チャンピオンシップにおける現在のポジションを維持することだろうか。
そうは言っても、難しい挑戦になると思う。
Q: 達成できる可能性は?
MP: グリッドの予選第2セッションのセクション、具体的には11番手から14番手までのポジションでスタートしない限りは、ポイント獲得は難しいということが、かなりはっきりしてきた。
何かしらの偶然が介入しない限りはね。
しかし、このグリッドポジションからだったら可能だということを多くのチームが証明している。
ただ、トップチームのマシンは信頼性が高いので、ポイント獲得は確かに難しい。
この目標達成のプロセスのひとつとして、より安定した予選ポジション獲得のためにアンソニーとの作業に取り組んでいる。
彼には予選第2セッションへ進出が可能なスピードがある。
しかし、ドライバーとチーム両方のミスによって、毎回は、第2セッション進出が果たせないでいる。
これが肝心な点だ。
Q: SUPER AGURI F1 TEAMは、なぜこれほど早くステップアップすることができたのでしょう?
MP: SAF1チームの立ち上げ当初のエンジニアとマネージャーの一団は、非常に経験のある人々だった。
彼らに、学び成長していこうという意欲に溢れたチームメンバーが加わったことで、比較的、楽にステップアップすることができた。
チームの経験というのは、メンバーをスペシャリストに育てるためには欠かせないとても重要なものだ。
われわれは数多くのスペシャリストをレースチームに加え、レース用のマシンの更なる最適化を図ることができている。
Q: しかし、これほど小さなチームがモータースポーツの頂点で戦うのは大変なのでは?
MP: リソースはもちろん重要な要素の一つで、規模が小さいチームであるだけに、よく「どうやってリソースを手に入れているんだ」と尋ねられるが、その答えは実行力だ。
われわれは、テクニカル・パートナーシップにも真剣に取り組んでいるので、パートナーがただ部品を供給するだけではなく、その他の面でもいろいろと協力してくれている。
例えば、日本のホンダと緊密な仕事関係を築くことで、様々な経験や専門知識を彼らから学ぶことができる。
もしマテリアルに問題があったら、ホンダには専門家が大勢いるので彼らに質問すればいい。
そうすれば、事実上、われわれのマテリアル担当者や専門知識が増えたのと同じことだ。
もちろん、必要に応じてだが、様々な分野でこのようなことが行われている。
もう一つの例として挙げられるのは、われわれがホンダ製のギヤボックスを採用していることだ。
これによって、必要な人員数もテスト資金もかなり削減することができる。
また、規模が小さいということは、よりフレキシブルだということで、われわれの仕事のやり方やシステムはまだ進化を続けている。
簡単な例を挙げると、ドライバーとレースエンジニアリンググループとの間の無線を通したコミュニケーションがうまくいっていなかったので、バルセロナではエンジニア全員がピットウォールを離れて、トラックの中の涼しくて静かなオフィスに座ってドライバーと通信した。
すると、結果としてコミュニケーションが改善され、初のチャンピオンシップポイント獲得へと繋がったんだ。
最先端なやり方だろう!
Q: アンソニーの話が出ましたが、彼はどのような進歩を遂げていますか?
MP: もちろん、テストドライバーからレーシングドライバーへは大きなステップアップだ。
昨年、フランク・モンタニーがチームに加わった時にも、われわれは同じことを経験している。
彼はチームにも良く馴染んでいるが、われわれのほとんどはすでに1年間ともに仕事をしているので、彼がチームにとけ込むには時間がかかる。
チームとの関係をより深めるために、シミュレータープロジェクトなど、いくつか特別に彼が取り組んでいるプロジェクトがある。
Q: シミュレータープロジェクトのことを詳しく教えてください。
MP: このプロジェクトはまだ試験的なものだが、アンソニーはエンジニアとともに、シミュレーターのどの部分が役に立つのかを研究している。
われわれは、賛否両論分かれるこのようなシステムの理解をより深めようとしているんだ。
Q: 将来的にシミュレーターはどれぐらい重要になると思いますか?
MP: 将来的にはテストがさらに制限されてくるので、シミュレーターの存在はより重要になるだろう。しかし、現段階では試験的なプログラムにしか過ぎない。基本的に、アンソニーは役に立つと思われるタイプのものを試して、将来的に役立つデータになると判断した精度の高い情報だけをわれわれにフィードバックしている。今年は、シュミレーターを使って富士スピードウェイの準備をしたらおもしろいと思う。あそこでのレースの経験があるドライバーは少ないからね。
Q: 今後、どのような開発部品の投入が予定されていますか?
MP: 昨年と同じように、多くの空力デバイスを開発して、レースで戦っている他のチームの開発の速度に追いつくように努力していくつもりだ。
新しいホンダ製ギヤボックスへのアップグレードも終わり、それによってもたらされるパッケージのメリットを最大限に生かすための新しいフロアを投入することができた。
モンツァは通常のウイングパッケージを使い、ハンガリーでは少しハイダウンフォースにアップグレードする予定だ。
Q: 来週、ニュルブルクリンクで開催されるヨーロッパGPのために、何か特別な計画はありますか?
MP: すでに言っているように、予選第2セッション進出を目指す。
それがポイント獲得への一番のチャンスだし、少なくとも、直近のライバルと戦い、現在のチャンピオンシップのポジションを維持する一番の近道だ。
最近のコメント